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日本とインドの社会保障協定締結(10月1日発効)

外務省は、日本とインドの社会保障協定が10月1日に発効すると発表しました。社会保険料の二重払いと掛け捨ての問題を解消するのが目的です。

 従来、両国の企業から一時的に相手国に海外赴任する駐在員らは、両国の公的年金制度について二重に加入義務が生じていました。
 しかし、従来の制度は、①社会保険料の二重払いと掛け捨ての問題が生じ、両国の企業や国民にとって大きな負担となっていました。②短期間の海外赴任では、就労地国の年金を受給する権利を取得するために必要な時期的要件を満たせませんでした。
 そこで、両政府は、かかる問題と負担を解消すべく、赴任期間が5年以内の駐在員は、母国の社会保険制度のみに加入すれば済むとともに(協定7条)、保険期間を通算して(協定13条)両国で公的年金の受給権を得ることができる日印社会保障協定を締結しました。
 なお、船員として一方の締約国の旗を掲げる海上航行船舶において被用者として就労する場合でも、本協定は適用されます(協定8条)。

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外国人の「サイン」/戦国武将らの「花押」 自筆証書遺言の押印の有効性

 民法968条第1項は、自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない旨規定します。
 ここで、古来戦国武将らがサインとして使っていた花押によって遺言書が作成された場合、花押が押印として認められるかが問題となります。
 最高裁は6月3日、「花押は押印とは認められない」として、遺言書は無効とする判断を示しました。花押が「書く」もので「押す」ものではないとし、重要な文書は署名、押印して完結させる慣行が我が国にはあると判断し、花押は民法上の押印の要件を満たさないと結論づけました。
 この点、外国人のサインは、押印として認められるのか否か問題となります。

(外国人がサインした自筆証書遺言)
 最高裁は、日本に帰化した元ロシア人が、遺言書に印をつけずサインのみとしたことについて、約40年間日本に在住したが、主にロシア語と英語を使用して欧州式の生活様式で過ごしていることから、遺言書は有効であるとし、サインを押印として認めています(昭和48年最高裁第3小法廷)。従って、外国人が、主に日本語を使用して日本式の生活様式で過ごした場合は、自筆証書遺言のサインは無効とされるおれがあります。

(外国人の署名捺印及無資力証明に関する法律)
 外国人の署名捺印及無資力証明に関する法律第1条は、法令の規定により署名、捺印すべき場合においては、外国人は署名することをもって足りる旨規定します。同条2項は、捺印のみをすべき場合においては、外国人は署名することをもって捺印に代えることができる旨規定します。

(公正証書遺言)
 自筆証書遺言は、記載方法等によって有効性に疑義が生じるおそれがありますので、公正証書にて遺言を作成させることをお勧めいたします。

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外国人から求められる経歴証明書、退職証明書の請求時効

 外国人労働者が我が国において転職をするとき、新しい勤務先や地方入国管理局から「経歴証明書」「退職証明書」等の書類を求められることがあります。ここで、外国人労働者が働いていた従前の勤務先は、外国人労働者から請求があった場合、当該証明書の作成及び交付に必ず応じなければならないか問題となります。

1 日本の法令が適用
 法の適用に関する通則法は、法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法によると旨規定します(法7条)。また、労働契約の成立及び効力について第7条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立及び効力については、第8条第2項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する旨規定します(法12条第3項)。
 外国人労働者との雇用契約では、雇用契約書に日本の労働法令を適用する旨の記載がある場合、当事者が当該法律行為の当時に選択した地、すなわち日本の法が適用となります。一方、雇用契約書に何ら記載がない場合であっても、労務を提供すべき日本の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定されることにより、日本の法が適用となります。
 よって、日本における外国人労働者との雇用契約は、日本の法律(労働基準法等)が適用となります(法7条、12条3項)。

2 退職時の証明
 労働基準法は、労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない旨規定します(法22条第1項)。
 よって、外国人労働者が退職した場合において、経歴証明書、退職証明書等を請求した場合、勤務先は、遅滞なくこれを交付する義務があります(法22条1項)。なお、同項違反は、30万円以下の罰金となります(法120条)。

3 請求時効
 法は、労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する旨規定します(法115条)。
 その他の請求権とは、労働基準法上、労働者が請求できる一切の権利をいい、例えば年次有給休暇に関する請求権、帰郷旅費請求権、退職時の証明書請求権等が該当します。
 外国人労働者の経歴証明書、退職証明書の請求権は、労働基準法22条1項に規定した請求権であり「その他の請求権」に該当します。
 よって、当該証明書の請求権は、2年間これを行わないと時効によって消滅します。

4 結論
 勤務先は、外国人労働者が退職した場合、2年間は経歴証明書、退職証明書を交付する義務があります。一方、退職日から2年経過後は、交付義務がなくなります。
 なお、労働基準法は最低基準を規定した法律であって(法1条2項)、時効経過後であっても、当該証明書を交付しても問題はありません。単に使用者側に法律上の義務が無くなったに過ぎないからです。

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外国人が日本に住所を有しない場合の会社設立手続

今から約1年前、登記申請における会社の代表者の住居要件が緩和されて以降、日本に住所を有しない外国人でも、会社設立することができるようになりました。当事務所でも、多くの案件をご支援させて頂くことができました。そこで、改正されて1年経過したことを契機に、具体的な手続を公知したいと思います。現在、日本に住所を有しない外国人が、合法的に設立できるのは、合同会社等の持分会社に限られ、株式会社の設立は、他人名義を利用した脱法的な方法しかないと思われます。

1 代表者の住居要件緩和
 従来、株式会社の代表取締役のうち少なくとも1名は、日本に住所を有しなければ、設立の登記の申請は受理されませんでした(昭和59年9月26日法務省民四第4974号民事局第四課長回答、昭和60年3月11日法務省民四第1480号民事局第四課長回答)。
 しかし、当該通達は外国からの投資が制限されているとの指摘があり、平成27年3月16日、法務省は当該通達を廃止しました。
 そこで、代表者が日本に住所を有しない場合でも、内国法人を設立することができるようになりました。

2 サイン証明書
 登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければなりません(商業登記法20条1項)。そして、合同会社設立登記申請には、印鑑届書に押印した市区町村役場発行の印鑑証明書を添付します(商業登記規則第9条第5項)。
 しかし、日本に住所を有しない外国人は、中長期滞在者等の外国人住民ではなく、印鑑証明書を取得することができません(住民基本台帳法30条の45)。
 この場合、法律は、法令の規定により署名、捺印すべき場合においては、外国人は署名をもって足りる旨規定しますので(外国人の署名捺印及無資力証明に関する法律1条1項)、外国人の署名が本人であることを証明する「サイン証明書」及びその訳文を添付します(昭和48年1月29日民四第821号民事局通達)。サイン証明書とは、当該外国人が当該居住地の公証人の面前でサインをし、公証人から認証を受けたものをいいます。
 よって、日本に住所を有しない外国人は、サイン証明書及びその訳文を添付します。

3 出資の履行方法
 会社法は、株式会社の出資の払込みは、発起人が定めた銀行、信託会社等に払込みする旨規定します(会社法34条2項)。出資の払込みは、銀行法2条1項に規定する銀行、又は信託業法2条2項により内閣総理大臣の免許を受けた日本に本店又は支店のある銀行及び信託会社等に限られます。この点、日本に住所を有しない外国人は、在留カードを有しないため、日本に本店又は支店のある銀行等で預金口座を開設することができません(犯罪による収益の移転防止に関する法律4条)。
 一方、合同同社の設立時の出資の履行は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込みします(会社法578条)。同条では、法34条2項を準用しておらず、合同会社の設立時の出資の履行は、銀行等に払込むのは義務ではなく、設立する会社の領収書をもって代用できます。持分会社の設立時の要件を緩和する趣旨です。
 よって、日本に本店又は支店のある銀行等に預金口座を開設できない場合でも、合同会社の設立時の出資の履行をすることができます。

4 定款認証は不要
 会社法は、株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない旨規定し(法26条1項)、法26条1項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力は生じません(法30条)。
 一方、合同会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印します(法575条)。同条では、法30条を準用しておらず、合同会社の設立には、公証人の定款認証は不要となります。持分会社の設立時の要件を緩和する趣旨です。
 よって、合同会社の定款は、公証人の認証が不要となります。

5 その他
 合同会社の定款には、収入印紙4万円(電子定款は不要)、設立登記申請には、収入印紙6万円を添付します。合同会社は、株式会社に組織変更できます(会社法2条26号、同746条、同747条)。また、登記申請は、司法書士業務となります(司法書士法3条1項)。

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行方不明となった外国人との離婚手続

国際結婚した後、外国人が行方不明となった場合、どのような離婚手続をすればよいか問題となります。以下、行方不明となった外国人との離婚手続について解説します。

1 いずれの国の法律が適用されるか
 夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法となります(法の適用に関する通則法第27条ただし書)。我が国では、行方不明となった外国人との離婚について夫婦の一方が日本に滞在しているとき、日本の法律を適用できるとしています。

2 協議離婚は不可
 夫婦は、その協議で、離婚をすることができます(民法763条)。しかし、行方不明となった外国人とは協議離婚することができません。そこで、裁判上の離婚によって離婚をすることになります(民法770条)。

3 無断提出した離婚届の有効性
 民法上、婚姻の無効については民法742条に規定がありますが、離婚の無効については規定がありません。
 しかし、①家事審判法23条は、家庭裁判所における審判として協議離婚の無効の場合も含めて規定しています。②民法742条は「人違その他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」(同条1項)に婚姻は無効とされており、同様に解釈すれば「当事者間に離婚の意思がないとき」も無効と解します。③最高裁では、当事者の意思に基づかない離婚は当然無効と判示しています(昭和34年8月7日最高裁判決)。
 よって、行方不明の外国人に無断で離婚届を提出した場合、離婚は無効となります。

3 裁判管轄
 法は、事件の種類によって、日本の裁判所の管轄権を規定します(民事訴訟法3条の2~22条)。
 しかし、日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたと思われる行方不明の外国人との離婚についての規定はありません(民事訴訟法3条の2第1項かっこ書)。
 この点、最高裁判所は「原告が遺棄された場合」「被告が行方不明の場合」、例外的に原告の住所地が日本にあれば日本を管轄すべきであると判示しています(昭和39年3月25日最高裁判決)。
 よって、行方不明の外国人との離婚訴訟では、被告(行方不明な外国人)が日本にいたときの最後の住所地が管轄となります(民事訴訟法4条1項)

4 調停不要
 調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をします(家事審判法18条1項)。いわゆる「調停前置主義」です。当該主義の下、原則、訴訟の前段階において離婚調停をする必要があります。
 しかし、行方不明となった外国人と離婚する場合、相手がどこにいるかわからないのですから、調停に付することは適当ではありません。
 そこで、家事審判法18条2項ただし書により、調停は不要となり、直接家庭裁判所に離婚訴訟を提起することができます。

5 離婚訴訟
(1)離婚事由
 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができます(民法770条第1項)。行方不明の外国人との離婚事由は、配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)。 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(3号)。 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)のいずれかに該当します。
(2)訴額
 行方不明となっている外国人との離婚訴訟は、請求が離婚だけの場合(慰謝料等がない場合)、訴額は算定不能となるため一律160万円となります。収入印紙は、1万3000円となります。
(3)公示送達
 送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所にします(民事訴訟法103条第1項)
 しかし、行方不明となっている外国人を被告とする場合、訴状を外国人が受けとることはありません。
 そこで、同法110条1項1号により、公示送達を申立てます。公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示する方法です(同法111条)。公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生じます(同法112条)。公示送達の申立ては、「公示送達申立書」を作成し、「調査報告書」「不在住証明書」を提出します。従来、不在住証明書は、旧外国人登録法に基づき、外国人は住民票に記載されないことから市区町村役場において不在住証明書を発行していませんでした。現在では、同法が廃止となり不在住証明書を発行しています。

6 離婚届
 離婚裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出ます(戸籍法77条1項において準用する同法63条1項)。これによって、離婚手続は完了します。

7 その他
 日本人の配偶者等の在留資格をもつて本邦に在留する者は、離婚が生じた日から十四日以内に、法務大臣に対し、その旨及び法務省令で定める事項を届け出ます(入管法19条の16)。本条の届け出は、中長期滞在者の外国人であって、離婚した日本人に届出義務は生じません。

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