改正入管法の概要(平成31年4月1日施行)

 外国人労働者の受け入れ拡大を図るべく新しい在留資格「特定技能」を創設した出入国管理及び難民認定法(以下「法」といいます。)改正案が、12月8日未明の参議院本会議で採決され可決、成立しました。なお、法案の施行日は、平成31年4月1日からです(附則1条)。

1.改正の趣旨
 従来、法は、在留資格に「建設」「農業」等を規定しておらず、外国人が我が国において報酬を伴う活動をするには、原則として高い専門性を有する在留資格「医療」「法律・会計業務」「研究」等に限定していました(法2条の2、法19条、法別表1等)。
 一方、法は、外国人技能実習制度を採用し、建設業、農業等について外国人技能実習生の受け入れを認めていました。
 しかし、技能実習法は、基本理念として労働力の需給の調整の手段として行われてはならない旨規定しているにもかかわらず(同法3条2項)、基本理念に反し、労働力の需給の調整の手段として技能実習制度が利用されているとの指摘がありました。
 そこで、法は、建設業や農業等の特定産業分野の深刻な人手不足に対応し、一定の技能を有する外国人の受け入れ拡大を図るべく新しい在留資格「特定技能」を創設しました(改正法別表1の2)。

2.特定産業分野に限定
 新しい在留資格「特定技能」は、人材を確保することが困難な状況下にあり、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定める特定産業分野に限定されています(改正法別表1の2)。
 特定産業分野を規定した法務省令は、未だ規定されておらず、年明け頃に規定される予定です。
法務省が検討している分野は、介護業、外食業、建設業、ビルクリーニング業、農業、飲食料品製造業、宿泊業、素形材産業、造船船用工業、漁業、自動車整備業、産業機械製造業、電気等情報関連産業、航空業の14業種です。

3.在留資格「特定技能」1号
 新しい在留資格「特定技能」1号は、本邦において特定産業分野であって法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動ができます(改正法別表1の2第1号)。
 ここで「法務省令で定める相当程度の知識又は経験」と規定していますが、法務省令は未だ規定しておらず、年明け頃に規定される予定です。国会質疑の中で明らかとなった「相当程度の知識又は経験」には、日常会話程度の日本語能力試験及び各特定産業分野を所管する省庁が規定した特定技能評価試験を外国で実施し、合格することが必要とされています。当該試験は、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジア、他1国(調整中)の8国において実施される予定です。
 ただし、技能実習生として3年以上の経験を有する者は、当該試験は免除される予定です。
 なお、在留資格「特定技能」1号の約半数は、在留資格「技能実習」からの変更を想定しています。

4.在留資格「特定技能」2号
 新しい在留資格「特定技能」2号は、本邦において特定残業分野であって法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動ができます(改正法別表1の2第2号)。
 ここで「法務省令で定める熟練した技能」と規定していますが、法務省令は未だ規定しておらず、年明けに規定される予定です。国会質疑の中で明らかとなった「熟練した技能」には、原則として在留資格「特定技能」1号を有する者を対象とし、更に高度の試験に合格することが必要とされています。例えば、建設業の現場監督等が該当します。
 ただし、政府は、在留資格「特定技能」2号に変更するための試験について数年間は実施しないことを明らかにしています。
 なお、衆議院法務委員会は、在留資格「特定技能」2号については、既存の専門的・技術的な就労資格と同様の高い水準の技能を求めるものとし、我が国の産業、雇用及び国民生活に与える影響に十分に配慮しつつ、熟練した技能を有する人材を外国人により確保することが真に必要な分野に限って受入れを行うなど、厳格な運用に努める旨決議しています(衆議院法務委員会附帯決議第3項)。

5.在留期間・永住許可・家族滞在
 外国人の在留期間は、在留資格に応じて法務省令に規定されています(法施行規則3条、法別表2)。
 しかし、今回の改正案に伴い、法務省は省令の改正案は示しておらず具体的な在留期間は不明ですが、山下法務大臣の国会答弁によれば、在留資格「特定技能」1号は5年の有期とし、在留資格「特定技能」2号は他の在留資格と同様に5年以後も更新することができる旨、検討するとしています。
 よって、在留資格「特定技能」2号を有する外国人の扶養を受ける配偶者又は子は、在留資格「家族滞在」により来日することができます(法7条の2)。又、当該外国人が原則として引き続き10年以上本邦に在留しているとき、永住許可申請をすることができます(法22条)。
 一方、在留資格「特定技能」1号を有する外国人は、在留期間が5年の有期であることから、配偶者又は子の「家族滞在」は認められず、永住許可申請もできません。

6.変更許可
 法は、在留資格「技能実習」1号イ又はロに係るものついては、本邦の公私の機関を変更することができない旨規定します(法20条1項かっこ書)。
 しかし、在留資格「特定技能」を有する者については、本邦の公私の機関又は特定産業分野を変更することが認められています(改正法20条1項かっこ書)。
 よって、在留資格「特定技能」を有する者は、特定技能の範囲内において勤務先を変更し、特定産業分野を変更することができます(同)。又、要件を満たせば他の在留資格に変更することもできます(法20条)

7.特定技能雇用契約書の作成
 労働基準法15条1項は、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない旨規定します。
 又、労働契約法4条2項は、労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする旨規定します。
 労働条件通知書(雇用契約書)の書面的明示事項は、①労働契約の期間に関する事項、②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項、③就業の場所及び従事すべき業務に関する事項、④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇等に関する事項、⑤賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項、⑥退職に関する事項となります(労働基準法施行規則5条1項1号乃至4号、同2項)。
 しかし、在留資格「特定技能」の活動を行おうとする外国人を雇用する者は、上記労働法令に加えて、契約期間が満了した外国人の出国を確保するための措置等、法務省令で定めた特定技能雇用契約を締結しなければなりません(改正法2条の5第1項)。そして、特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関は、特定技能雇用契約の適切な履行が確保されるものとして法務省令で定める基準に適合させなければなりません(同条3項1号)。法務省令は規定されておらず具体的な内容は不明ですが、国会質疑において「保証金の徴収等、悪質な紹介業者等が介在しないこと」「悪質な紹介業者には国内外の業者が含まれる」旨、山下法務大臣から答弁があったことから、在留資格認定証明書交付申請時において(法7条の2)、国内外の悪質ブローカーの介在の有無が特定技能雇用契約書によって審査されることになります。
 又、使用者は、労働者の国籍等を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない旨規定し(労働基準法3条)、加えて報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他待遇について差別的取扱いをしてはならない旨規定し(改正法2条の5第2項)、重畳的に外国人労働者の保護を図っています。
 よって、特定技能雇用契約は、労働法令及び法務省令いずれの要件にも適合させなければなりません。なお、衆議院及び参議院の両法務委員会は、特定技能外国人が日本人と同等額以上の適正な賃金の支払を受け、公正な処遇を受けるよう、特定技能雇用契約の適格性を厳正に審査し、特定技能所属機関及び登録支援機関に対し、賃金の支払状況や支援の実施状況等についての監督を十分に行い、不正行為がったときは厳正に対処する旨決議しています(衆議院法務委員会附帯決議第5項、参議院法務委員会附帯決議第2項)。

8.特定技能所属機関
 改正法は、特定技能雇用契約の相手方である本邦の公私の機関(以下「特定技能所属機関」といいます。)は、特定技能雇用契約の変更、終了したとき、又は新たな契約の締結をしたとき等、所定の事項について出入国在留管理庁長官に対し、届け出なければならない旨規定します(改正法19条の18)。
 又、出入国在留管理庁長官は、特定技能所属機関に対し、特定技能雇用契約の適切な履行等のために必要な指導及び助言を行い(改正法19条の19)、報告、帳簿書類の提出命令、出頭要求、質問、立ち入り、検査し(改正法19条の20)、改善命令等をすることができる旨規定します(改正法19条の21)。
 なお、当該処分に違反又は拒否等をした者は、罰則の対象となります(改正法71条の3、同71条の4)

9.1号特定技能外国人支援計画の作成
 改正法は、特定技能所属機関は、法務省令で定めるところにより、外国人が当該活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成しなければならない旨規定します(改正法2条の5第6項)。
 上記法務省令は未だ規定されておらず詳細は不明ですが、法務省の資料によれば、①入国前の生活ガイダンスの提供、②外国人の住宅の確保、③在留中の生活オリエンテーションの実施、④生活のための日本語習得の支援、⑤外国人からの相談・苦情への対応、⑥各種行政手続についての情報提供、⑦非自発的離職時の転職支援、⑧その他となっています。

10.登録支援機関
 改正法は、特定技能所属機関は、適合1号特定技能外国人支援計画に基づき、1号特定技能外国人支援を行わなければなりませんが(改正法19条の22第1項)、他の者に当該支援の実施を委託できる旨規定します(同条2項)。
 当該支援業務を行う者は、申請書等を出入国在留管理庁長官に提出し(改正法19条の24)、手数料を納付し(改正法19条の23第3項)、出入国在留管理庁長官の登録を受けることができます(同条1項)。又、5年ごとに更新となります(同条2項)。ただし、一定の欠格事由に該当した場合、登録は拒否されます(改正法19条の26)。
 なお、登録支援機関は、事業協同組合、派遣会社、社会保険労務士法人、NPO法人等が想定されます。

11.出入国在留管理庁
 従来、入国管理局は、大臣官房、民事局、刑事局、矯正局、保護局、人権擁護局、訟務局とともに法務省の内部部局でした。
 しかし、近年、我が国を訪れる外国人が増加する中において、厳格かつ円滑な入国審査を両立し、増加する外国人に対する在留管理を的確に実施する必要が生じました。
 そこで、法務省は、入国管理局を「出入国在留管理庁」と名称変更し、公安審査委員会及び公安調査庁ともに法務省の外局としました(改正法務省設置法26条)。
 なお、出入国在留管理庁長官は、法務省の外局になったことに伴い、告示、訓令又は通達を発し(国家行政組織法14条1項2項)、関係行政機関の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求め、並びに当該関係行政機関の政策に関し意見を述べることができることになりました(同法15条)。

12.永住許可申請の厳格化(附帯決議)
 参議院法務委員会は、本改正案に伴い、近年の我が国の在留外国人数の増加を踏まえ、在留外国人からの永住許可申請に対しては、法22条2項の要件の適合性について、厳格に審査を行う旨決議しました(平成30年12月8日参議院法務委員会附帯決議第10項)。
 附帯決議には法的拘束力はありませんが、政府(出入国在留管理庁)は当該決議を無視できず尊重することになっています。
 よって、改正法施行後(平成31年4月1日)は、申請人の在留資格の区分を問わず永住許可申請の審査の厳格化が想定されます。