虚偽申請によって在留資格を取得した者を罰則の対象とした改正法適用

虚偽申請によって在留資格を取得した者、これを幇助した勤務先、弁護士、行政書士及び学校職員等の申請取次者を罰則の対象とした改正入管法が第192回臨時国会において成立し、平成29年1月1日から施行されています。

1.改正法を適用した事件
 岩手県警察は、6月、虚偽申請によって在留資格を取得した者等を罰則の対象とした改正入管法を適用して、中国人女性を逮捕、送検しました。改正法の適用は、全国で2件目です。偽装結婚が絡む事件としては初適用となります。
 又、当該事件において、被告の偽装結婚を知りながら在職証明書に押印して在留期間の更新を幇助したとして、被告が勤める勤務先の経営者も書類送検されました。

2.改正法の趣旨
 従来、入管法は、虚偽申請によって在留資格を取得した者について、罰則の対象ではありませんでした(旧法70条、74条の6)。
 しかし、政府は、「世界一安全な日本」創造戦略において不法滞在対策、偽装滞在対策等の推進を掲げ、偽装滞在者等の積極的な摘発を図り、これらを助長する集団密航、旅券等の偽変造、偽装結婚等に係る各種犯罪等について取締りを強化する旨決定しました(平成25年12月10日閣議決定)。
 そこで、法は、虚偽申請を罰則の対象とすべく、偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は4章2節の規定による許可(更新、変更、永住許可等)を受けた者を罰則の対象とし(改正法70条1項2号の2)、営利の目的で当該規定の行為の実行を容易にした者も、罰則の対象となる旨改正しました(改正法74条の6)。

3.勤務先、弁護士、行政書士及び学校職員等の申請取次者の留意点
 改正入管法は、偽りその他不正の手段(虚偽申請)によって、在留資格を取得等した者は、罰則の対象となる旨規定します(法70条1項2号の2)。
 又、当該規定を新設するに伴い、営利の目的で当該規定の行為の実行を容易にした者、すなわちブローカーだけではなく、虚偽申請に加担した勤務先、弁護士、行政書士及び学校職員等の申請取次者も罰則の対象となりました(法74条の6)。
 思うに、「偽りその他不正の手段」が広義に解釈されると、申請書に記載した事実を証明できなかった場合や、申請書の一部不記載の場合なども処罰の対象となり、入国管理局が虚偽申立又は告発をした場合、捜査や刑事訴追の対象となるおそれがあります。申請書類は、行政書士等が調査・立証に努めるは当然ながら、海外で作成されたものも多く、調査能力には限界があります。当局の濫用的な告発等があった場合、外国人本人だけでなく、本人の家族、勤務先、弁護士、行政書士及び学校職員等についても「偽りその他不正の手段」について未必の故意があるとして共犯(共同正犯や幇助犯)として捜査や刑事訴追の対象となるおそれがあります。
 よって、勤務先、弁護士、行政書士及び学校職員等の申請取次者は、出入国の公正な管理を図る法目的の下(1条)、今まで以上に申請書類の真実性に努めるとともに虚偽申請を未然に防止しなければなりません。又、行政書士においては、業務の適正を図ることにより、行政(入国管理局)に関する手続の円滑な実施に寄与しなければなりません(行政書士法1条)。