外国人から求められる経歴証明書、退職証明書の請求時効

 外国人労働者が我が国において転職をするとき、新しい勤務先や地方入国管理局から「経歴証明書」「退職証明書」等の書類を求められることがあります。ここで、外国人労働者が働いていた従前の勤務先は、外国人労働者から請求があった場合、当該証明書の作成及び交付に必ず応じなければならないか問題となります。

1 日本の法令が適用
 法の適用に関する通則法は、法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法によると旨規定します(法7条)。また、労働契約の成立及び効力について第7条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立及び効力については、第8条第2項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する旨規定します(法12条第3項)。
 外国人労働者との雇用契約では、雇用契約書に日本の労働法令を適用する旨の記載がある場合、当事者が当該法律行為の当時に選択した地、すなわち日本の法が適用となります。一方、雇用契約書に何ら記載がない場合であっても、労務を提供すべき日本の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定されることにより、日本の法が適用となります。
 よって、日本における外国人労働者との雇用契約は、日本の法律(労働基準法等)が適用となります(法7条、12条3項)。

2 退職時の証明
 労働基準法は、労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない旨規定します(法22条第1項)。
 よって、外国人労働者が退職した場合において、経歴証明書、退職証明書等を請求した場合、勤務先は、遅滞なくこれを交付する義務があります(法22条1項)。なお、同項違反は、30万円以下の罰金となります(法120条)。

3 請求時効
 法は、労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する旨規定します(法115条)。
 その他の請求権とは、労働基準法上、労働者が請求できる一切の権利をいい、例えば年次有給休暇に関する請求権、帰郷旅費請求権、退職時の証明書請求権等が該当します。
 外国人労働者の経歴証明書、退職証明書の請求権は、労働基準法22条1項に規定した請求権であり「その他の請求権」に該当します。
 よって、当該証明書の請求権は、2年間これを行わないと時効によって消滅します。

4 結論
 勤務先は、外国人労働者が退職した場合、2年間は経歴証明書、退職証明書を交付する義務があります。一方、退職日から2年経過後は、交付義務がなくなります。
 なお、労働基準法は最低基準を規定した法律であって(法1条2項)、時効経過後であっても、当該証明書を交付しても問題はありません。単に使用者側に法律上の義務が無くなったに過ぎないからです。