外国人が日本に住所を有しない場合の会社設立手続

今から約1年前、登記申請における会社の代表者の住居要件が緩和されて以降、日本に住所を有しない外国人でも、会社設立することができるようになりました。当事務所でも、多くの案件をご支援させて頂くことができました。そこで、改正されて1年経過したことを契機に、具体的な手続を公知したいと思います。現在、日本に住所を有しない外国人が、合法的に設立できるのは、合同会社等の持分会社に限られ、株式会社の設立は、他人名義を利用した脱法的な方法しかないと思われます。

1 代表者の住居要件緩和
 従来、株式会社の代表取締役のうち少なくとも1名は、日本に住所を有しなければ、設立の登記の申請は受理されませんでした(昭和59年9月26日法務省民四第4974号民事局第四課長回答、昭和60年3月11日法務省民四第1480号民事局第四課長回答)。
 しかし、当該通達は外国からの投資が制限されているとの指摘があり、平成27年3月16日、法務省は当該通達を廃止しました。
 そこで、代表者が日本に住所を有しない場合でも、内国法人を設立することができるようになりました。

2 サイン証明書
 登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければなりません(商業登記法20条1項)。そして、合同会社設立登記申請には、印鑑届書に押印した市区町村役場発行の印鑑証明書を添付します(商業登記規則第9条第5項)。
 しかし、日本に住所を有しない外国人は、中長期滞在者等の外国人住民ではなく、印鑑証明書を取得することができません(住民基本台帳法30条の45)。
 この場合、法律は、法令の規定により署名、捺印すべき場合においては、外国人は署名をもって足りる旨規定しますので(外国人の署名捺印及無資力証明に関する法律1条1項)、外国人の署名が本人であることを証明する「サイン証明書」及びその訳文を添付します(昭和48年1月29日民四第821号民事局通達)。サイン証明書とは、当該外国人が当該居住地の公証人の面前でサインをし、公証人から認証を受けたものをいいます。
 よって、日本に住所を有しない外国人は、サイン証明書及びその訳文を添付します。

3 出資の履行方法
 会社法は、株式会社の出資の払込みは、発起人が定めた銀行、信託会社等に払込みする旨規定します(会社法34条2項)。出資の払込みは、銀行法2条1項に規定する銀行、又は信託業法2条2項により内閣総理大臣の免許を受けた日本に本店又は支店のある銀行及び信託会社等に限られます。この点、日本に住所を有しない外国人は、在留カードを有しないため、日本に本店又は支店のある銀行等で預金口座を開設することができません(犯罪による収益の移転防止に関する法律4条)。
 一方、合同同社の設立時の出資の履行は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込みします(会社法578条)。同条では、法34条2項を準用しておらず、合同会社の設立時の出資の履行は、銀行等に払込むのは義務ではなく、設立する会社の領収書をもって代用できます。持分会社の設立時の要件を緩和する趣旨です。
 よって、日本に本店又は支店のある銀行等に預金口座を開設できない場合でも、合同会社の設立時の出資の履行をすることができます。

4 定款認証は不要
 会社法は、株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない旨規定し(法26条1項)、法26条1項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力は生じません(法30条)。
 一方、合同会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印します(法575条)。同条では、法30条を準用しておらず、合同会社の設立には、公証人の定款認証は不要となります。持分会社の設立時の要件を緩和する趣旨です。
 よって、合同会社の定款は、公証人の認証が不要となります。

5 その他
 合同会社の定款には、収入印紙4万円(電子定款は不要)、設立登記申請には、収入印紙6万円を添付します。合同会社は、株式会社に組織変更できます(会社法2条26号、同746条、同747条)。また、登記申請は、司法書士業務となります(司法書士法3条1項)。