行方不明となった外国人との離婚手続

国際結婚した後、外国人が行方不明となった場合、どのような離婚手続をすればよいか問題となります。以下、行方不明となった外国人との離婚手続について解説します。

1 いずれの国の法律が適用されるか
 夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法となります(法の適用に関する通則法第27条ただし書)。我が国では、行方不明となった外国人との離婚について夫婦の一方が日本に滞在しているとき、日本の法律を適用できるとしています。

2 協議離婚は不可
 夫婦は、その協議で、離婚をすることができます(民法763条)。しかし、行方不明となった外国人とは協議離婚することができません。そこで、裁判上の離婚によって離婚をすることになります(民法770条)。

3 無断提出した離婚届の有効性
 民法上、婚姻の無効については民法742条に規定がありますが、離婚の無効については規定がありません。
 しかし、①家事審判法23条は、家庭裁判所における審判として協議離婚の無効の場合も含めて規定しています。②民法742条は「人違その他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」(同条1項)に婚姻は無効とされており、同様に解釈すれば「当事者間に離婚の意思がないとき」も無効と解します。③最高裁では、当事者の意思に基づかない離婚は当然無効と判示しています(昭和34年8月7日最高裁判決)。
 よって、行方不明の外国人に無断で離婚届を提出した場合、離婚は無効となります。

3 裁判管轄
 法は、事件の種類によって、日本の裁判所の管轄権を規定します(民事訴訟法3条の2~22条)。
 しかし、日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたと思われる行方不明の外国人との離婚についての規定はありません(民事訴訟法3条の2第1項かっこ書)。
 この点、最高裁判所は「原告が遺棄された場合」「被告が行方不明の場合」、例外的に原告の住所地が日本にあれば日本を管轄すべきであると判示しています(昭和39年3月25日最高裁判決)。
 よって、行方不明の外国人との離婚訴訟では、被告(行方不明な外国人)が日本にいたときの最後の住所地が管轄となります(民事訴訟法4条1項)

4 調停不要
 調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をします(家事審判法18条1項)。いわゆる「調停前置主義」です。当該主義の下、原則、訴訟の前段階において離婚調停をする必要があります。
 しかし、行方不明となった外国人と離婚する場合、相手がどこにいるかわからないのですから、調停に付することは適当ではありません。
 そこで、家事審判法18条2項ただし書により、調停は不要となり、直接家庭裁判所に離婚訴訟を提起することができます。

5 離婚訴訟
(1)離婚事由
 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができます(民法770条第1項)。行方不明の外国人との離婚事由は、配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)。 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(3号)。 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)のいずれかに該当します。
(2)訴額
 行方不明となっている外国人との離婚訴訟は、請求が離婚だけの場合(慰謝料等がない場合)、訴額は算定不能となるため一律160万円となります。収入印紙は、1万3000円となります。
(3)公示送達
 送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所にします(民事訴訟法103条第1項)
 しかし、行方不明となっている外国人を被告とする場合、訴状を外国人が受けとることはありません。
 そこで、同法110条1項1号により、公示送達を申立てます。公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示する方法です(同法111条)。公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生じます(同法112条)。公示送達の申立ては、「公示送達申立書」を作成し、「調査報告書」「不在住証明書」を提出します。従来、不在住証明書は、旧外国人登録法に基づき、外国人は住民票に記載されないことから市区町村役場において不在住証明書を発行していませんでした。現在では、同法が廃止となり不在住証明書を発行しています。

6 離婚届
 離婚裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出ます(戸籍法77条1項において準用する同法63条1項)。これによって、離婚手続は完了します。

7 その他
 日本人の配偶者等の在留資格をもつて本邦に在留する者は、離婚が生じた日から十四日以内に、法務大臣に対し、その旨及び法務省令で定める事項を届け出ます(入管法19条の16)。本条の届け出は、中長期滞在者の外国人であって、離婚した日本人に届出義務は生じません。