外国人の遺族年金受給と在留資格変更

外国人の遺族年金受給と在留資格変更

日本人と国際結婚した後、日本人が死亡した場合、「日本人の配偶者等」の在留資格を有する外国人は、以下の選択をする必要があります。
①子供がいる場合、定住者への変更(1996年7月30日通達)
②再婚して日本人の配偶者等の更新
③就労、投資等の他の在留資格への変更
④子供がいない場合、定住者への変更(死別に伴う離婚定住)
⑤遺族年金を受給し、母国に帰国

(留意点)
①子供がいる場合、定住者への変更は、特に問題はありません。
②再婚して日本人の配偶者等の更新は、再婚が後記遺族年金等の失権事由に該当するため慎重に判断する必要があります(国民年金法40条1項2号、厚生年金保険法63条1項2号)。
③就労、投資等の他の在留資格への変更は、専門職としての内定、経験、学歴、資金等の要件を満たす必要があり、外国人女性には困難な場合が多いです。
④死別に伴う離婚定住への在留資格変更許可申請には、次の問題があります。法20条3項は、「外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」旨規定し、申請人側に「相当の理由」を立証する責任が生じます。この点、離婚定住には相当の理由を見出す根拠や立証資料が少なく、変更許可を得るのは事実上困難な場合が多いです。
 そこで、お勧めするのは、⑤遺族年金を受給し、母国に帰国する。という選択肢です。なぜなら、(ⅰ)遺族年金は国外でも受け取ることが可能であること。(ⅱ)法上の失権事由に該当しなければ、永続的に受給できること。(ⅲ)年金額は、夫の平均標準報酬額の75%であり、帰国後安定的な資金を得ることができること。シンガポール、上海、NYなどの物価の高い大都市でない限り、日本政府から支給される遺族年金だけで十分生活が可能となります。遺族年金は、死亡後の遺族の生活を保障する趣旨であり、死亡した配偶者が受け取る報酬の中から国に納付した保険料によって国が給付を行う法律で規定された公的年金制度です。

遺族年金について
遺族年金は、会社員の遺族が受給する遺族厚生年金、自営業者らの遺族が受給する遺族基礎年金があります。両制度は、受給できる遺族の範囲等の相違点はあっても、共通点は多いです。

1 発生要件
 遺族厚生年金は、被保険者の夫又は妻が死亡したとき、その者の遺族である外国人夫又は妻に支給されます(厚年法58条1項)。

2 受給権者
遺族厚生年金を受けることができる遺族に被保険者の配偶者であって、被保険者の死亡の当時、その者によって生計を維持されていた外国人は該当しますので、遺族厚生年金の受け取ることができます(厚年法59条1項1号)。

3 年金額
 遺族が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 死亡した被保険者又は被保険者であつた者の被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額の4分の3に相当する額(厚年法60条項1号)。年金額は、働いていたときの平均報酬の約75%です。
 
4 失権事由
  遺族厚生年金の受給権は、受給権者が婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)に至つたときは、消滅する(厚年法63条1項2号)。
 外国人が再婚、事実婚等の法上の失権事由に該当しなければ、遺族厚生年金は永続的に受給できます。そのため、遺族年金を受給しながら働いても失権や減額はありません。また、雇用保険から失業給付を受け取っても失権しません。

5 時期的要件
 保険給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によつて消滅する(厚年法92条1項)。遺族は、5年以内に手続してください。

6 手続要件
 ①保険給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基づいて、実施機関が裁定する(厚年法33条)。
 ②遺族厚生年金について、法第33条の規定による裁定を受けようとする者は、次の各号に掲げる事項を記載した請求書を、機構に提出しなければならない(厚生年金保険法施行規則60条1項)。遺族年金は、裁定請求書その他必要書類を添えて提出する必要があり、外国人本人又は社会保険労務士が手続します。

7 その他
  法律には、遺族厚生年金の受給にあたり、受給権者の住所要件の規定はありません。そのため、海外に帰国した場合でも、受給することができます。また、遺族厚生年金は、非課税扱いです(所得税法9条1項3号ロ)。

8 国民年金の注意点(子のない妻は受給できない)
  遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者又は子であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする(国年法37条の2第1項)。 同項1号では、配偶者については、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること。
 遺族基礎年金では、配偶者に生計を同じくする子がいることが要件となります。すなわち、子のない妻は受給できません。遺族厚生年金との相違点です。