不法入国者の知的障害の子に配慮(退去強制処分の取消訴訟判決)

 東京地裁は10日、不法入国を理由に、東京入国管理局から国外退去処分を命じられたフィリピン国籍の男性(47)が取り消しを求めた訴訟で、男性の請求を認める判決を言い渡しました。
永住許可を有する同国籍の妻(44)との間にダウン症の幼児がおり、谷口豊裁判長は「原告が母国に送還されれば、残された家族の生活は極めて困難になる」と判断しました。判決によると、フィリピン国籍の男性は1997年に不法入国。解体作業員などとして働き、日本で出会った妻との間に2人の子どもがおり、1人はダウン症で知的障害を抱えています。フィリピン国籍の男性が退去強制された場合の影響について、国は「妻が働き生計を立てることも可能で、特に支障はない」と主張していました。しかし、判決では「妻が働きながらダウン症の子を育てるのには限界がある。国の判断には、重要な事実について複数の誤りがあり、妥当性を欠くのは明らか」と判示し、退去強制処分の取り消しを命じました。東京入国管理局では「判決内容を検討し、今後の対応を協議する」とのことです。

(行政事件訴訟法の基礎知識)
処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する(行政事件訴訟法第33条)。

※ 「拘束」とは、同一理由により、同一処分を禁止した反復禁止効を意味を持ちます。
※ 裁判所が下す判決は、形成判決にとどまり、裁判所が行政処分を命じる給付判決はできません。これは、裁判所の行政権の行使となり、三権分立に違反するからです。

取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない(同法14条1項) 。
取消訴訟は、処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない(2項)。

※ 「処分」とは、不法残留等の違法行為が存在するだけではなく、その行為に基づいて行政から示された処分を意味します。したがって、処分がなければ取消訴訟は提起できません。

取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する(同法12条)。

※ 例外として特許権などの知的財産権の審決取消訴訟は、特許庁での審判があるため、第1審を省略し東京高等裁判所(知財高裁)が専属管轄となります(特許法178条等)。

行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による(同法7条)。

※ 行政事件訴訟法は、1条から46条まであります。しかし、明文していない規定(口頭弁論・証拠など)がありますので、その場合は、民事訴訟法に基づきます。